2008年のリーマンショック時に下がった不動産価格も2021年現在では大きく値上がりしており、マイホームを売却して利益が出たという人も多いのではないでしょうか。
不動産を売却して利益が出れば、利益に対して所得税、住民税が課税されます。
しかし、マイホームの場合は利益が出ても、特例を使えば利益から一定額の控除ができたり、長期間住んでいると軽減税率が適用したりすることが可能です。
こういった特例を知らずにいると、本来支払わなくてもよかった税金を支払うことに。
今回は、マイホームの住み替えは特例を使って賢く節税する方法についてご紹介いたします。
目次
必ず使いたいマイホームの買い替え特例
投資用の不動産とは違い、マイホームの場合は、利益目的で購入しているわけではありません。
住み替えにあたっては新たに住宅ローンを組むケースも多いので、買い替えやすいように居住用財産(=マイホーム)の買換え特例や3,000万控除、10年超所有の軽減税率といった多くの特例が用意されています。
居住用財産の買換え特例とは
まずは、居住用財産の買換え特例です。
居住用財産の買換え特例とは、令和3年12月31までに一定の条件を満たして売却すれば、譲渡益を繰り延べできる制度です。
条件には、誰が住んでいたのか、居住期間、買い替える物件の広さ、築年数といったものがあります。
実際の条件について詳しく見ていきましょう。
売却するマイホームの適用条件とは
マイホームといっても賃貸しているケースもあり、必ずしも自分や家族が住んでいるわけではありません。
しかし、居住用財産の買換え特例の適用を受けるには、必ず自分が住んでいた、又は引越ししてから3年以内に売却する必要があります。
もちろん物件が国内にあることも条件です。
その他、過去2年以内に3,000万控除や10年超所有の軽減税率・譲渡損失の繰越控除などを利用していない、売却金額が1億円以内、親族や身内への売却はNGといった条件があります。
(参照:国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm)
購入するマイホームの適用条件とは
買換えで購入する物件は、日本国内にあるもの、㎡数は50㎡以上、土地の場合は500㎡以下のものに限り、親族や身内からの購入はNGです。
マイホームを売却した前年から翌年の前後3年以内に買い替える必要があり、耐火建築物の中古住宅は、築25年以内又は一定の耐震基準を満たしたもの、耐火建築物以外の中古住宅だと、築25年以内又は取得紀元までに一定の耐震基準を満たしたものである必要があります。
居住用財産の買換え特例を使うメリット
例えば、6,000万円のマイホームに買い替えるとしましょう。
売却するマイホームは、当初1,500万円で購入して5,500万円で売れたとします。
本来であれば、利益の4,000万円が課税対象となりますが、居住用財産の買換え特例を使うと、売却した年には課税されず、将来買い替えたマイホームを売却するときまで利益への課税が繰り延べになります。
5年以下だと約40%で1,600万、5年超だと約20%で800万が課税されますが、将来利益が繰り延べされることで、当座の資金繰りは非常に楽になります。
これが居住用財産の買換え特例を使うメリットですね。
将来売却時には税金を納めないといけませんが、損をした場合は相殺できますし、住み続ける場合は税金を納める必要はありません。
居住用財産の買換え特例を使うデメリット
居住用財産の買換え特例は、一時的に税金を払わなくてよいというだけで納税義務がなくなるわけではありません。
転勤が多い職種であったり、家族の状況が大きく変わる時期に会ったりする場合は、住み替え後に数年で売却しないといけないケースもあります。
そうなると繰り延べしていた譲渡税の納税が必要になり、突然の大きな出費で大変なことに。
居住用財産の買換え特例を使う場合はこの点に注意が必要です。
所有期間に関係なく控除できる3,000万円の特別控除の特例
居住用財産の特例の他にもよく利用されるのが、所有財産を売却した場合に活用できる3,000万円の特別控除の特例です。
所有期間による制限がなく、非常に使いやすい特例と言えます。
例えば、マイホームを売却して5,000万円の利益が出た場合、3,000万円の特別控除の特例を使えば、課税されるのは2,000万円に対してのみです。
ただし、この特例を使う場合も一定の条件を満たす必要があります。
3,000万円の特別控除の特例を受けるための適応条件
3,000万円の特別控除の特例は、自分が住んでいる家、家屋とともにその敷地や借地権の売却が対象となり、住まなくなってから3年を経過する12月31日までに売却する必要があります。
建物を取り壊す場合は、取り壊して1年以内に売買契約を結ばなければならず、解体から売買契約を結ぶ間に賃貸や貸駐車場をしてはいけません。
前年、前々年にこの特例を受けていると使えず、親族や身内への売買はもちろんNGです。
(参照:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
買換え特例と3,000万円特別控除はどっちを使うべき?
買換え特例は税の繰り延べ、3,000万円特別控除は税の控除と性質が大きく違います。
例えば、売却して利益が6,000万出たとします。
3,000万円の特別控除を使うと控除できない3,000万円に対して課税されます。
(ただし、共有名義の場合は1人につき3,000万円控除が使えるので6,000万円まで控除が可能)
短期譲渡の税率約40%だと1,200万円納税する必要があります。
この場合であれば、買換え特例を使って税を繰り延べしておく方が良いでしょう。
購入した物件を将来売却するとき、価格が下がれば相殺することできます。
利益が3,000万円+α程度であれば3,000万円特別控除、それ以上の場合は買換え特例を使うのが良いでしょう。
所有期間が10年を超えると使える軽減税率の特例
不動産を売却して利益が出た場合には、所有期間が5年以下を短期譲渡として税率約40%、5年を超えると長期譲渡として税率約20%が課税されます。
しかし、マイホームの場合は、所有期間が10年を超えると軽減税率の特例を使うことができ、長期譲渡の税率よりも低い税率(6000万円までが税率14.21%)が適用されます。
他の特例と同様に利用する場合には条件があります。
軽減税率の特例を受けるための適応条件
軽減税率の特例を受けるためには、自分が住んでいる家、家屋とともに敷地の売却が対象となり、住まなくなってから、建物が災害等で滅失した場合はその敷地に住めなくなってから3年を経過する12月31日までに売却する必要があります。
売却した年の1月1日までに所有期間が10年間を経過している、3000万の特別控除の特例以外のマイホームを売却したときの特例を使っていないことが条件になります。
前年、前々年にこの特例を受けていると使えず、親族や身内への売買はもちろんNGです。
(参照:国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
マイホームの買換えで損失が出た場合はどうなるの?
利益が出た場合は、様々なマイホームの特例を活用することで税金繰り延べしたり、抑えたりすることができますが、損失が出た場合にはどうなるのでしょうか。
マイホームの買換えで損失が出た場合は、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が使えるケースがあります。
この特例を使うと家を売却して損失が出た金額と給与所得などの収入を相殺できるので確定申告で還付してもらうことができます。
1年で相殺できない場合は、以降3年は繰り延べも。
住宅ローン控除と併用できるので安心ですね。
ただし、適応条件が他の特例に比べると細かいので注意が必要です。
(参照:国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
住宅ローンの特例
住宅ローンを使って買換え先を購入する場合に活用できるのが、住宅借入金等特別控除です。
一般的には、住宅ローン控除や住宅ローン減税などと言われています。
住宅借入金等特別控除では、借入期間10年以上の住宅ローンを活用した場合に、年末の残高に対して1%を所得税から控除できます。
消費税10%で物件を購入した場合には、2019年10月1日から2020年12月31日の期間に入居すると、控除期間が3年間延長されます。
一年間で最大40万円まで、基準を満たした長期優良住宅や低炭素住宅であれば上限が50万円まで控除できます。
(参照:国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm)
特例の併用は可能か
上述のとおり居住用財産の特例については、主に居住用財産の買換え特例、3,000万円の特別控除の特例、軽減税率の特例、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例、住宅借入金等特別控除などがあります。
すべて使えればよいのですが、併用できるものは限られています。
併用できるのは、3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例、住宅借入金等特別控除の組合せになります。
大阪で不動産を売却する際に注意するポイント
総務省統計局が公表している平成25年住宅・土地統計調査では、東京都の通勤時間は43.8分となっており、対する大阪府の通勤時間は36.1分です。
東京都であれば1時間弱でも通勤圏内と言えますが、大阪で不動産を売却する場合、通勤に掛かる時間は概ね30分が目安と言えます。
大阪府の中心である大阪市北区(JR大阪駅、阪急・阪神大阪梅田)エリアへの通勤時間30分圏内の物件は特に人気が高く、高値早期売却が期待できます。
しかし、30分~1時間の物件なるとはあまり強気の価格設定をすると売却が長引いてしまうおそれがあります。
大阪で不動産を売却する場合は、ご自身の物件がJR大阪駅、阪急・阪神大阪梅田までどのくらいかかるかが重要だと言えます。
【まとめ】
住みかえる場合に、居住用財産の特例について知らないと払わなくてもよかった税金を払うことになります。
特に、マイホームは高額なので、その金額は数百万になるでしょう。
利益が3,000万円以下なら当然、3,000万円の特別控除の特例を活用すべきですが、3,000万円を大きく超える利益が出る場合は、3,000万円の特別控除の特例よりも居住用財産の買換え特例を使った方が良いケースもあります。
又、併用できる組み合わせも決まっているのでその辺りも知っておく必要があります。
マイホームの住み替えは特例を使って賢く節税しましょう。
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